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学会について

Academic Conference

学会長挨拶

テーマ:理学療法―グローバルスタンダードと多様性

 この度,第32回埼玉県理学療法学会を,2025年1月19日(日)に,大宮ソニックシティにて開催させていただくことになりました.本学術大会が,会員の研鑽と相互の交流の場となり,さらに埼玉県理学療法士会並びに会員の更なる発展の道標となるよう,NovisもVeteranも楽しめる大会を目指しています.

 「科学的根拠に基づいた医療(Evidence Based Medicine またはpractice)」は,その社会的要求も大きくなっていることに加え,科学の急激な進歩,高度通信情報社会とより,最先端の研究成果へも容易に触れることが可能になりました.多くのデータの集積と解析が行われる一方,倫理的な要因などから,二重盲検法など高いevidenceを示す研究は難しいこともあり,日々の臨床の拠り所となり得る理学療法のoutcomeを示すevidenceは十分であるとは言えない状況です.

 そのような中で,医学や周辺科学の進歩に伴い,理学療法でも様々な領域でパラダイムシフトが起こっているようです.神経系理学療法を例に挙げれば,1980年台はNUSTEP(Northwestern University Special Therapeutic Exercise Project)conferenceに基づいたいわゆる神経生理学的治療が主流でしたが,1990年にⅡSTEP(Symposium on Translating Evidence into Practice)でBernsteinのシステム理論やCarrとShepherdが提唱した運動(再)学習理論などが注目され,さらに,2005年のⅢSTEP(Translating Theory into Effective Practice)では,運動学習,運動制御に加え,スキルの開発,スキルの保持などが強調され,ICFの「参加」志向,タスク志向型と,治療メソッドからパラダイムへの変換がありました.それから約20年,現在のグローバルスタンダードはどうなっているのでしょう.

 また,理学療法士の研究領域や理学療法士の活躍する職域にも裾野の広がり,多様性も期待されています.理学療法の対象は人間にとどまらず動物への需要も認識され,さらに人工知能(AI)・仮想現実(VR),拡張現実(AR)の理学療法への応用,新しい領域として「耳鼻咽喉科領域」の注目など,多様性の期待に応えるように多方面に広がっています.

 このように,情報過多の一方で,どんどん裾野が広がっていく複雑な状況ですから,少し整理することも必要であると考え,第32回の学会テーマを「理学療法―グローバルスタンダードと多様性」としました.現状における理学療法の主たる領域でのグローバルスタンダードを再確認し,教育内容,臨床行為の基礎を固めるとともに,広がりつつある理学療法の多様性について,理解を深める機会にしたいと考えます.

 市民公開講座は,「スポーツ・健康・理学療法」のテーマで企画しました.“2020年の東京オリンピック選手村での活動のレガシー”,“プロフェッショナルスポーツ選手のトレーニングやケアに対する理学療法士”,“地域の「シミュレーションスポーツを活用した健康づくり」について取り組む自治体”などの講演を通じ,市民への理学療法への理解を深めたいと考えます.

 一般演題も口述,ポスター共に多くの応募をお待ちしております.是非,有意義なdiscussionの場にしていただけることを期待しています.

第32回埼玉県理学療法学会

学会長

江口 勝彦

(日本保健医療大学)